【Q&A】 四大の新卒です。就職は難しいですか?

新卒の方のシンガポールでの就職は相当厳しく、積極的にはお勧めしません。

最近は「グローバル人材」という言葉がもてはやされたり、「セカ就」という言葉まで出てきていますが、だからといって、新卒で海外で就職するのは簡単なことではありません。

理由は2つあります。

1)新卒の方には就労ビザ発給が厳しい

外国で働くには、その国に貢献できるだけの何かを持っていなければならず、その国の国民では代替できない人材であることが重要になり、就労ビザの審査でもその点が重視されます。

新卒で就業経験が無い方は、この部分で政府に対してアピールすることが難しく、就労ビザ審査の厳しさは就業経験のある方に比べて、雲泥の差があります。

2010年以降、シンガポールの就労ビザ(EP)の審査規定が段階的に引き上げられています。これは高学歴のシンガポール人が増え、「就労ビザで働く外国人に職を奪われている」という声が大きくなっているからです。

更に2020年、新型コロナウイルスによる経済悪化を受けて、シンガポール政府も国民の雇用を最優先事項に掲げ、就労ビザ(EP)の審査基準(最低給与額)を過去にないレベルで大幅に引き上げました。シンガポールの四大卒の平均初任給は$3600程度ですが、外国人の四大新卒の方が就労ビザ(EP)を取得するには月給$4500~$6500(約35万円~50万円)必要になりました。

シンガポールの新卒もコロナの影響で就職活動に相当苦労している中、ここまで高額な給料を支払う価値のある外国人のみシンガポールで働いてほしいという政府の強い意向を表しています。この給料で日本人を含む外国人の新卒が採用されるには、よほど希少性のある能力が無ければ不可能です。

就労ビザにはEPよりも一段階低いSパスというビザもあり、このビザであれば、最低給与は$2500(約20万円)のため、新卒の方でも採用されやすい額です。

しかしSパスは就職する企業のシンガポール人スタッフ数の13%(2021年からは10%)までと採用枠が決まっています。その枠を持つ企業で働く場合のみ取得できる就労ビザですが、枠があってもEPの取得が厳しいため枠を全て使い切っている企業も多いのが現状です。実感として全求人の1割以下がSパス枠を持つ求人です。

2)企業は経験者を採用したい

シンガポールの求人の多くは即戦力の人材を求めています。日本のように新卒で採用して教育をしていく…という考えはほぼ皆無です。

多くの求人は関連する業務の経験者を求めており、未経験の場合でも社会人経験は必須である求人がほとんどです。

実際、過去にシンガポールで就職した留学生の皆さんのほとんどが日本での就労経験を評価され、関連のある仕事にシンガポールでも就いています。

そのため、新卒の方は応募すら受け付けてもらえない求人が多く、新卒でも面接してもらえる求人は、言い方は悪いですが、「日本人であれば誰でも良い仕事」や「離職率が高く新卒も応募可にしなければ人が集まらない仕事」といったマイナスの理由があることが多いです。

例えば、コールセンター(原則日本語のみの仕事。日本なら契約社員の仕事)の仕事です。こうした仕事を希望されるのなら良いのですが、コールセンターでの経験は他職種に転職する際に経験として見てもらえないことも多いです。要するに、望んで新卒の日本人を採用しようとする企業は「ほとんどない」というのが現実です。

現在、コロナの影響や就労ビザの審査基準厳格化の影響でシンガポールで現地採用として働く日本人が解雇されるケースが急増しています。特に最低給与の引き上げは影響が大きく、例えば旧基準の月給$4000で働いていた方が就労ビザ(EP)更新(1~3年毎)の際は$6000程必要になっています。そのため解雇されるケースが後を絶ちません。この状況は今後1~3年は続くはずです。

解雇された後もシンガポールで働き続けたい方は就職活動を行います。シンガポールでの就労経験を持つ日本人です。こうした方が新卒で就職活動をする際の強力なライバルになります。経験者が圧倒的に有利な状況で新卒の方が内定を得るのはよほどの運がなければほぼ不可能な状況です。

3)日本の新卒一括採用制度は新卒にとても優しい制度

日本の大学を卒業したなら、日本にある企業に新卒で入社するのが正社員として働くには最も簡単であり、また多くのことを学べます。日本にある企業は新卒一括採用に力をいれており、多くのお金を投資して、採用・新人教育をしています。給料を得て、更に学ばせてもらえるのが日本の新卒一括採用です。

一方、シンガポールなど海外で就職活動をする場合、「経験者もライバル」になります。未経験の新卒の方は「圧倒的に不利な立場」になることはご理解頂けるかと思います。日本で新卒なのに中途採用の募集に応募するようなものなのです。

新卒での海外就職は、「一生に一度与えられた新卒採用枠での就職チャンスを自ら捨て、あえて可能性が相当低い道を選ぶ」ことになります。その点は十分ご理解ください。

シンガポールで働くことを目指すのなら、日本で最低でも2年、できれば5年程度経験を積んだ後をお勧めします。面接までたどりつくことが出来る求人の数が新卒に比べ圧倒的に多くなります。

求人の多くはあえて日本人を採用する理由があります。日本語が出来ることはもちろんですが、「日本のビジネス習慣を体得していること」、これも大きな理由です。それゆえ、日本での職務経験はとても大切なのです。

同様のことは、シンガポールで人材紹介業をしている日本人の方のブログにも掲載されています。こちらもご覧ください。

http://ynccsingapore.blog.fc2.com/blog-entry-79.html

海外で働くことが自分の大切な目標であるのなら、大学卒業後は、日本で就職することをお勧めします。理由は今まで書いてきたとおり、実践の経験を積むこと、特に日本的なビジネス習慣を身につけることが大切だからです。

職種・業種は、特に文系の方で興味のある職種・業種が無ければ、なるべくつぶしの効く仕事、具体的には、職種は営業系が良いと思います。業種は最も割合が多いメーカーや商社が良いでしょう。

若いうちはどうしても「海外就職」という結果を求めてしまいがちです。
しかし海外就職は「急がば回れ」です。日本で就職することが一見遠回りに見えるかもしれませんが、長い目で見たら決してはそうではないのです。

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